相続の手続きの流れを復習がてらさらってみる。
病院内で死亡した場合、医師によって死亡を確認され、死亡時刻が記録されます。
その後、医師によって死亡診断書が作成されます。
入院中の場合や救急搬送された場合が想定できますね。
医師の手によって、その死亡診断書に死因が記載され、行政への届出を経て戸籍の記録上も死亡となります。
死亡したのが病院外であった場合、一旦病院に搬送され医師によって死体検案書が作成されます。
事件性が高いと認められる場合には検察関係から遺体を調べられることもあります。
状況次第で死因の特定のために検査や解剖がされることがあり、というか大抵されます。
また、事件性の有無の確認のために司法解剖されることもあります。
遺族としては愛する故人の遺体が解剖されるのは忌避するところですが、事件性が無いことを証明するためにも司法解剖には同意した方が良いと思います。
特に、職場や学校など所属する団体の施設内であったりした場合は死因がある程度予測できるものであっても所属団体の責任の有無を判断するためにも必要な処置でしょう。
遺体の状況によっては相当な時間がかかる場合もあります。
司法解剖後の遺体は剃毛され内臓が取り除かれて縫合されて戻ります。
遺体を持ち上げたときの軽さには驚かされることになるでしょう。
死亡診断書と死体検案書の違いは理解しやすいと思います。
それらの書面から、遺体の状況や死因が読み取れます。
医師によっては自死であってもやんわりとした表現を用いる方もいます。
自殺か否かで保険の支払いに違いがある場合などはそのあたりに注意します。
死亡が確定して、記録上も故人となったら死亡時にさかのぼって相続が発生します。
次にやることは相続人の調査ですが、確定している相続人がいればまず遺言の調査をするべきでしょう。
故人の居宅や居所、関連した場所で遺言書が発見された場合は決して開封せずに、故人の最期の居住地の家庭裁判所へ検認の申し立てをします。
申し立ては相続人であれば誰でもでき、検認の申立人になります。
検認は裁判所で相続人が立ち会って遺言書を開封し、内容を確認することです。
相続人の一人が申立人となり、他の相続人にも通知が届きます。
申立人は必ず検認に立ち会わなければなりませんが、他の相続人は任意で参加します。
検認後は裁判所で検認調書が作成され、関係人の申請で検認証明書が発行されます。
発見された遺言書と検認証明書と相続人であることの証明ができる戸籍謄本があれば遺言を執行していくことができます。
遺言執行人が記載されている場合は遺言執行人がその権限内で遺言を執行します。
遺言執行人が専門家である場合には委任された執行人へ連絡しましょう。
自筆遺言や秘密遺言などの場合はちゃんと検認手続きをしないと遺言書自体が無効と判断される場合があります。
最近法改正があり、自筆遺言でも法務局に保管してもらう制度ができました。
この場合、内容の有効無効はともかく、裁判所での検認手続きは不要です。
また、公正証書遺言も裁判所での検認手続きは不要です。
公正証書遺言の場合は、遺言書自体が紛失していても公証役場で保管・記録していますので再度謄本を出してもらうこともできます。
ここまでで勘の良い方は気付くと思われますが、法務局及び公証役場に遺言があって手元にない場合も想定できます。
なので、相続が発生したときはまず、法務局と公証人役場に遺言書が存在しないか検索してもらって確認する必要があります。
特に死期が迫っていることを自覚している場合や自殺であった場合は遺言書が存在している可能性が否定できませんので確認の必要があると思います。
不慮の事故死などであった場合でも故人が経営者や資産家など、相続財産が大きいと推定できる場合にも同様です。
遺言に関しては細かな規定があり、多種多様な判例も多いです。
遺言書を粗末に扱ったり不正をした場合には相応の報いがありますので慎重に扱ってください。
遺言書は故人の最後の意思表示なので尊重して、適正な手続きをしましょう。
例え内容に不備があったとしても、できるだけ故人の遺志を尊重した相続を。
遺言書が存在しなかった場合は相続人全員での遺産分割協議になります。
先に述べますが、もしも明らかに負債が大きく、遺産で賄えないと判断した場合は相続放棄を選択することになります。
相続放棄の申し立ては相続人が故人(被相続人)の最後の住所地の家庭裁判所で行います。
相続放棄の注意点は、熟慮期間の3ヵ月と、相続権が後順位者に移行するということ。
熟慮期間についてはやむを得ない正当な理由がある場合、家庭裁判所に申し立てて延長することもできます。
延長せずに放置した場合、単純承認したことになりもはや放棄できません。
熟慮期間の起算時は自己に相続が発生したことを知ったときです。
相続権の順位は、配偶者は例外的に必ず相続人になり、第一位が子(卑属)、第二位が親(尊属)、そして第三位が兄弟姉妹(傍系)になります。
卑属ですでに亡くなっている相続人がいればその子、孫と代襲相続します。
卑属が存在していない場合は尊属に相続権が発生します。
親が既になくとも祖父母が存命であれば祖父母に相続権が発生します。
卑属も尊属も存在していない場合に傍系に相続権が発生します。
兄弟姉妹に亡くなった相続人がいる場合はその子、甥姪に代襲相続権が発生します。
甥姪からは代襲相続しません。
故人の配偶者と子が相続放棄した場合は相続権が故人の存命の親に発生します。
故人の親も相続放棄した場合、今度は故人の兄弟姉妹に相続権が発生します。
相続放棄は元から相続人ではなかったという扱いになるため、相続放棄した方の子へは代襲はしません。
しかし、すでに亡くなっていて代襲になる場合は代襲相続人が相続放棄しなければなりません。
なので、相続放棄する場合は故人の配偶者、子、親、兄弟姉妹が全員それぞれ相続放棄しなければ、相続放棄しなかった相続人に相続されることになります。
簡単に言えば故人の配偶者と子と親と兄弟姉妹で存命の方は全員、相続人がすでに亡くなっている場合はその代襲相続人まで相続放棄しなければなりません。
もう一つ注意点がありました・・・相続放棄しても管理責任は残るというのが曲者です。
相続放棄した不動産の管理責任などがわかりやすいでしょうか。
相続放棄した場合、遺産は財団となり、利害関係者の申し立てによって管財人(専門家)が選任されて、できる限り換価されて名乗り出た債権者に債権額に応じて配当されます。
管財人が選任されれば管財人が管理責任を持ちますが当然に管財人報酬が発生します。
処分が完了して財団が解散するまで費用がかかってしまうわけですね。
処分しきれなかった財産は国庫に帰属することになります。
このあたりが相続放置や空き家問題の原因にも見えますね・・・一因だと思いますが。
よくわからない場合は専門家に相談しましょう。
次に限定承認という相続の方法があります。
遺産を相続するが、負債に関しては遺産で賄える分までしか相続しないという方法です。
一見お得で便利に見えますが、これは相続人全員で裁判所に申し立てて手続きをしなければなりません。
しかも、相続しても負債が大きい可能性を念頭に入れていますので、相続放棄を選択せずに一旦相続して、その中で払える分だけ債務を弁済することになります。
実際のところ、管財人を置かずに相続人自らの手で負債を含めた相続財産の処分をするようなものです。
なので、債権者に対してはそれぞれに申し出の催促をしたり、相当な知識と手間が必要になります。
実務上、ほとんど使われていない相続方法で、この記事を見ている方は選択の余地はないでしょう。
専門家が相続人になった場合に自ら処理する際には使えそうです。
最期に最も普通の単純承認です。
単純に資産も負債も含めた全相続財産を引き継ぐということで手続きは不要です。
相続放棄も限定承認もしなかった場合は法定単純承認となり、負債も含めて相続します。
注意点は相続財産の一部を相続方法が未定の内に一部処分した場合は単純承認したとみなされることですね。
何ら手続きをしなかった場合、何らかの相続財産を処分した場合、どちらも法定単純承認相続します。
相続財産の処分には特定の債権者への弁済も含まれると思われます。
他にも債権者がいた場合に不公平であり、争いになる可能性もあります。
金融機関などからの負債の場合は相手も専門家ですので、故人の死亡を証明すれば請求もなくなりますし、残債務額を報告してくれると思います。
個人間の取引の場合は事情を説明して残債務額の申し出だけしてもらって待ってもらいましょう。
そしてここまで読まれた方が気になるのは「後から多額の債務が発覚した場合」にどうすればいいのかでしょうか。
その場合は相続発生から熟慮期間に認識することができず、大きな負債はないと勘違いしたことが証明できれば法定単純承認を覆して手続きできます。
このような場合には悩まずに一刻も早く弁護士に相談しましょう。
単純承認して相続手続きを進める場合にはまず、相続人を確定しましょう。
故人の出生から死亡までの戸籍を全て集め、代襲相続人や養子、認知された婚外子など洗いざらい調査して戸籍を集めます。
これが結構一苦労で、専門家に依頼した方が費用対効果は高いと思います。
個人が集めようと思った場合、全てを集めきれないこともあり得ます。
専門家であれば、その資格を以て戸籍などの証明書を請求可能です。
故人が高齢であればあるほど、必要な書類も増えますし、困難も大きくなります。
それ故に、専門家を活用する利点があると言えるでしょう。
知らない相続人が存在しないとしても、存在しない証明として全て集めます。
その集めた戸籍から相続関係を明確にするために相続相関図を作成します。
次に相続財産を調査します。
現金、金融資産(預貯金、株式、有価証券など)、資産と認められる動産(自動車、宝飾品、美術品など)、不動産などの財産。
それから債務を調査しますが、債務は債権者が特定できないとなかなかわからなかったりします。
それぞれの評価額を確認して相続財産目録を作成します。
負債に関してはわかる範囲になると思いますが、目録を作るべきでしょう。
ここからようやく遺産分割協議に入ります。
遺産分割協議は基本的に相続人全員で合意していれば特に決まりはありません。
しかし、協議がまとまらず争いに発展してしまった場合は弁護士に依頼しましょう。
争族発生の時点で弁護士以外の専門家は手を引きます。
争いが熟していなければ合法という見方もありますが、弁護士法72条に抵触するからです。
専門家にお願いしていなかったとしても、争いが激化する前に弁護士に間に入ってもらった方が良いと思います。
なぜなら、争いになっても親族は親族で、その後の付き合いに支障が出ますから、早いうちに第三者に仲裁してもらった方が無難です。
専門家を選ぶ基準ですが、相続を担う専門家は弁護士、税理士、司法書士、行政書士あたりだと思います。
費用の面を考えると行政書士、不動産があるなら司法書士、遺産の総額が多額で相続税が発生する場合であれば税理士がいいでしょう。
しかし、誰にお願いしても登記は司法書士、相続税は税理士に外注になります。
そして争いになれば弁護士になりますが、やはり登記は司法書士、相続税は税理士です。
弁護士資格は登記も税務も可能ですが、全てやる弁護士はあまりいないと思います。
しかし、最終的な費用は誰の頼んでもそんなに変わらないかも知れません。
行政書士は多種多様なので相続業務を受けない先生もいらっしゃいますし、能力・知識もそれぞれ専門特化していたりします。
司法書士は忙しい先生だと調査や書面の作成を行政書士に外注したり、不動産登記しかしていない先生もいらっしゃいます。
税理士の先生の中にも相続業務を受けない先生もいらっしゃるようです。
税理士試験の科目で相続税を選択していない場合などが理由の場合もあります。
弁護士の先生も昨今増加が著しく、専門特化していることもあるので誰でも相続の実務に詳しいとは言い切れないかも知れません。
それでも弁護士資格を持っていれば相続に関わる法律は熟知していると思いますので、実務上の相続手続きは疎くても争いを解決する力量は担保されていると思います。
比較的オススメの相続業務の相談・依頼先は司法書士か相続業務を取り扱っている行政書士かなと思います。
金融資産はあるが、不動産が無く、相続税が課税されないなら行政書士の一択です。
不動産があるならば司法書士に頼むのが費用対効果が一番高いと思います。
故人の死亡を証明する書類、相続人を確定・証明する書類、相続相関図、財産目録、遺産分割協議書が揃えばもうあとは遺産を実際に相続して分割するだけです。
相続に際しては何かと実印が必要になりますので、印鑑証明書は用意しておくといいです。
・・・印鑑証明書は相続人代表者で5枚くらいあれば足りるかな?
他の相続人はそれぞれ遺産分割協議書に必要な1枚で大抵足りると思います。
なので、相続が発生したときは相続人の方々全員に連絡して印鑑証明書と実印を用意しておいてもらうとスムーズです。
それから専門家に委託する場合は最初に必要数+予備として多めに委任状を書いて渡しておくと楽です。
委任状も遺言の調査や金融機関の手続き、財産調査の際に特別なものが必要で、その時に印鑑証明書と実印が必要だったりもします。
認印でも足りる書類もありますし、そもそも押印の不要な書類もあります。
ですが、相続時の押印は基本的に実印で押してしまえば二度手間が防げるでしょう。
全ての財産を遺産分割協議書に従って相続人や受贈者に移転したら、一応全部完了したことを書面で報告しましょう。
それで相続はすっきり終了です、おつかれさまでした。
どこかおかしなところや書き加えることがあれば直すかもしれません。
ちょっと今回は長くなりすぎましたね・・・もっと書けますがw
遺言や相続はそれだけで一冊の本が書けるくらいです。
手続きや法律を勉強したい人ならともかく、そうでなければ専門家に相談した方が時間も手間もかからず、後の憂いもなくなります。
短絡的に相続手続きをして後から困ることも多いです。
今度機会があれば、こんな相続は後から面倒で困るみたいな記事も書きます。
・・・流石に眠いです、おやすみなさい。
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